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ISMS(ISO27001)で必要な文書一覧|規格が要求する文書化された情報と記録を整理
ISMSの文書は「規格本文が箇条ではっきり要求しているもの」と「附属書Aの管理策を運用するために実務上ほぼ必要になるもの」の2層に分けると整理しやすくなります。前者は数えられる範囲に収まり、後者は組織の規模やリスクによって増減します。この2層を混ぜたまま作り始めると、更新が追いつかない文書の山になりがちです。本記事では両者を一覧表で分け、文書と記録の違い、文書体系の作り方、文書管理の要件までを整理します。
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ISMS文書は「必須」と「実務上ほぼ必要」の2層で考える
ISO/IEC 27001:2022の本文(箇条4〜10)には、「文書化した情報として利用可能な状態にすること」「保持すること」と明記された箇所があります。これが第1層、つまり規格が明示的に要求する文書化した情報であり、存在しないこと自体が審査で指摘され得ます。
第2層は、附属書Aの管理策を「どう運用しているか」を説明するために整備することが多い規程・手順です。規格は規程の名前までは指定しませんが、アクセス権の付与・見直しの手順が決まっていなければ、管理策が運用されていることを説明しにくくなります。取得までの流れ全体はISO27001認証取得の進め方にまとめています。
規格本文が明示的に要求する文書化した情報の一覧
箇条番号とあわせて整理すると、自社に何が欠けているかを機械的に確認できます。名称は規格の用語であり、実際のファイル名は自社の呼び方で構いません。複数を1ファイルにまとめても分割しても、要求を満たしていれば形式は問われないのが一般的な考え方です。
| 箇条 | 文書化した情報 | 位置づけと記載の要点 |
|---|---|---|
| 4.3 | ISMSの適用範囲 | 対象の組織・拠点・業務・システムと、範囲外との境界を示す |
| 5.2 | 情報セキュリティ方針 | トップマネジメントが承認し、目的の枠組みと継続的改善の意思を示す |
| 6.1.2 / 6.1.3 | リスクアセスメントおよびリスク対応のプロセス | 基準(受容基準・実施基準)、手順、責任者を定義する |
| 6.1.3 d) | 適用宣言書(SoA) | 各管理策の適用可否、適用・除外理由、実施状況を一覧化する |
| 6.2 | 情報セキュリティ目的 | 測定可能な形で設定し、達成計画(誰が・いつ・何を)を伴う |
| 7.2 | 力量の証拠 | 担当者の力量を裏づける教育・資格・経験の記録 |
| 7.5 | 規格が要求する文書/組織が必要と判断した文書 | 文書管理の対象そのものの定義 |
| 8.1 | 運用の計画および管理に関する文書化した情報 | 計画どおり実施されたと確信するために必要な範囲で保持 |
| 8.2 | リスクアセスメントの結果 | 実施した時点のリスク一覧・評価結果 |
| 8.3 | リスク対応の結果 | 選択した対応と実施状況 |
| 9.1 | 監視、測定、分析および評価の結果 | 何を・いつ・誰が測ったかを含む |
| 9.2 | 内部監査プログラムおよび監査結果 | 計画(頻度・範囲・基準)と実施報告の双方 |
| 9.3 | マネジメントレビューの結果 | 各インプットへの対応と決定・指示事項 |
| 10.1 / 10.2 | 不適合の性質と処置、是正処置の結果 | 発生事象、応急処置、原因分析、再発防止と有効性確認 |
リスクアセスメントのプロセスと結果は、この表の中でも作成に時間がかかりやすい部分です。進め方はISMSのリスクアセスメントで個別に扱っています。
附属書Aの管理策に合わせて整備することが多い規程・手順
次の表は、100名規模までのIT企業でよく整備される単位です。すべてを別ファイルにする必要はなく、「情報セキュリティ管理規程」1本に章立てでまとめる組織も少なくありません。判断の軸は、改訂の頻度が違うものを同じファイルに入れないことです。
| 領域 | 想定される規程・手順 | 対になる主な記録 |
|---|---|---|
| 資産管理 | 情報資産管理規程、利用の許容範囲 | 情報資産台帳、持出し申請 |
| 情報分類 | 情報分類・取扱い基準、ラベリング手順 | 分類の見直し記録 |
| アクセス制御 | アクセス制御規程、特権ID管理手順 | アクセス権付与・削除申請、アクセス権レビュー記録 |
| 供給者管理 | 外部委託・供給者管理規程 | 委託先評価シート、秘密保持契約、年次見直し |
| インシデント管理 | インシデント対応手順、報告連絡体制 | インシデント記録、対応報告 |
| 事業継続 | 事業継続・ICT可用性に関する手順 | 訓練記録、復旧テスト結果 |
| 変更管理 | 変更管理手順、リリース承認基準 | 変更申請・承認記録 |
| セキュアな開発 | 開発標準、コードレビュー基準、環境分離方針 | レビュー記録、テスト結果、脆弱性対応 |
| ログ管理 | ログ取得・保護・保存期間の基準 | 監視結果、異常検知の対応記録 |
| 物理・人的 | 入退管理手順、雇用時および終了時の手続 | 入退室記録、誓約書、返却チェック |
「文書」と「記録」の違い
旧版では「文書」と「記録」を分けて要求していましたが、現行版はどちらも文書化した情報という1つの用語で扱います。ただし実務上は、性質の違いを意識した方が管理しやすくなります。
- 文書(方針・規程・手順・様式)は「これから何をするか」を定め、版数管理と承認が中心になる
- 記録(申請、議事録、レビュー結果、監査報告)は「実際に何が起きたか」の証跡で、書き換えを防ぐ保護が中心になる
- 規格の表現では、前者はおおむね「維持する」、後者は「保持する」に対応する
- 空白の様式は文書、記入済みの様式は記録、と考えると台帳が整理しやすい
文書体系の階層と、増やしすぎないコツ
一般的には、方針 → 規程 → 手順 → 様式/記録の4階層で組み立てます。上位ほど改訂頻度が低く承認者の職位が高い、下位ほど頻繁に変わる、という関係です。これが崩れると、細かい運用変更のたびにトップマネジメントの承認が必要になり、更新が止まります。
- 方針は1本に絞る。下位方針を作るのは、対象読者や承認者が本当に分かれるときだけにする
- 規程は「誰が・何を・どの頻度で」までにとどめ、画面操作は下位の手順書に逃がす
- ツール名や画面名が変わるたびに改訂が要る内容は、規程本文に埋め込まない
- 既存の社内規程(就業規則など)と重複する内容は、書き写さずに参照する
- 運用できる見込みのない頻度(例: 毎月の全件棚卸し)を規程に書かない
文書管理そのものに求められること(7.5.2 / 7.5.3)
文書の管理方法自体も要求事項です。7.5.2は作成・更新時に、識別(表題・日付・作成者・番号など)、形式と媒体、レビューと承認が適切であることを求めます。7.5.3は、必要なときに必要な場所で利用でき、かつ十分に保護されている状態を求めます。
| 観点 | 確認されやすい点 | 運用の例 |
|---|---|---|
| 識別 | 表題・文書番号・適用日が分かるか | ヘッダーに文書番号と発効日を固定表示 |
| 版数 | 最新版がどれか一意に分かるか | 改訂履歴に版数・日付・改訂理由・承認者を残す |
| 承認 | 権限のある者が承認しているか | 承認者の役割を文書管理規程で定義しておく |
| 配布・アクセス | 必要な人が読めるか、権限外に漏れないか | 共有権限の設定と閲覧範囲の定期確認 |
| 保護 | 意図しない変更・削除を防げるか | 正本の編集権限を限定し閲覧用は読み取り専用にする |
| 廃止 | 旧版が誤って使われないか | 旧版は廃止表示のうえ別領域へ退避する |
テンプレート利用の注意と、審査で見られやすい記録
テンプレートは出発点としては有効ですが、そのままでは自社の実態と合わない箇所が残ります。存在しない役職名や実施していない会議体が残ったままだと、記録との食い違いとして指摘されやすくなります。一般論として、導入直後に書かれている頻度と役割名を実態に合わせて全文見直す工程を挟むと、後戻りが減ります。
審査では文書そのものより「その文書どおりに動いた証跡」が確認されます。特に次の記録は、期間の抜けや承認欄の空白が見つかりやすい部分です。
- 教育・力量の記録(実施日、対象者、内容、理解度の確認)
- アクセス権のレビュー記録(対象システム、実施者、是正した内容)
- 内部監査の計画と報告(監査員の独立性が分かる記載を含む)
- マネジメントレビューの議事録(インプット項目への対応と決定事項)
- インシデント記録(軽微な事象を含む。ゼロ件が続くと検知の仕組みを問われやすい)
- 供給者の評価・見直し記録
版数管理と承認フローをツール側で回すという選択
文書一覧そのものはWordやスプレッドシートでも作れます。負荷が増えるのは、版数・承認・レビュー期限・記録との紐づけを人手で追い続ける部分です。文書、リスク、管理策、適用宣言書が別ファイルに散っていると、1つの改訂の波及を目視で追うことになります。
この作業をツール側に寄せると、承認履歴と版数が自動的に残り、レビュー期限の抜けも検知しやすくなります。まず自社にどの文書が足りていないかを確かめたい場合は、ISMS現在地セルフチェックから始めるとよいでしょう。
よくある質問
- ISMSの文書は最低いくつ必要ですか。
- 一律の正解はありません。規格本文が明示的に要求する文書化した情報は限られた数ですが、それを何ファイルに分けるかは組織の自由です。100名規模のIT企業では、方針1本と規程数本、手順・様式が十数点という構成になることが多いですが、事業内容や外部委託の範囲によって変わります。
- Wordやスプレッドシートで文書管理をしても問題ありませんか。
- 媒体や形式は規格で指定されていないため、一般にファイル形式そのものが問題になることはありません。確認されるのは、最新版が一意に分かるか、承認の記録が残るか、権限外の変更や削除を防げるか、といった管理状態です。ファイル名に版数を付ける運用にする場合は、旧版の扱いを規程で決めておくと混乱を避けやすくなります。
- ISMSマニュアルは必ず作る必要がありますか。
- 「マニュアル」という名称の1冊を作ることは、現行の規格では要求されていません。要求されているのは箇条ごとの文書化した情報であり、それらを1冊にまとめても、個別文書として持っても構いません。全体像を示す資料があると社内説明はしやすくなりますが、必須ではないという整理が一般的です。
- 電子承認(ワークフローツールでの承認)は認められますか。
- 承認の方法は規格で限定されていないため、電子的な承認が一般に否定されることはありません。重要なのは、誰が・いつ・どの版を承認したかを後から確認できることと、承認権限が文書管理の取り決めと一致していることです。押印との併用を求めるかどうかは、自社の内部統制上の判断になります。
- 文書はどのくらいの頻度で見直せばよいですか。
- 規格は具体的な頻度を定めていません。多くの組織は年1回の定期見直しに加え、組織変更、重大なインシデント、システムの大きな変更、法令や契約要求の変化があったときに随時見直す、という運用にしています。定めた頻度は必ず記録で裏づけられる範囲にとどめてください。
自社のISMSの現在地を5問で確認
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セルフチェックを始める本記事は一般的な情報提供を目的としており、審査結果や認証取得を保証するものではありません。制度・費用は変わることがあるため、最新情報は審査機関等でご確認ください。
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